問題(PCコンクリート)

プレストレストコンクリート(PC)の力学的特性、プレストレスの損失および施工に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. プレストレスの導入は、荷重作用時に引張応力が発生する領域にあらかじめ圧縮応力を付与することにより、部材の曲げひび割れ発生荷重を著しく増大させるが、部材の終局曲げ耐力(最大耐力)の増大にはほとんど寄与しない。
  2. ポストテンション方式におけるPCグラウトは、シース内のPC鋼材の防食とコンクリートとの付着確保を目的として注入されるが、シース上部への空隙発生を防ぐためにブリーディング率が極めて小さいものが用いられ、グラウト中に含まれる塩化物イオン量はセメント質量の 0.08% 以下(土木学会示方書)と規定されている。
  3. プレテンション方式では、PC鋼材とコンクリートとの付着力によってプレストレスが導入されるため、PC鋼材の端部から一定の伝達長(トランスファー長)にわたってプレストレスが漸増し、導入されるプレストレスは部材端部近傍よりも部材中央部付近の方が大きくなる。
  4. プレストレストコンクリート部材に導入されたプレストレス力は、時間の経過に伴い減少するが、この経時的な損失要因にはコンクリートの乾燥収縮およびクリープ、PC鋼材のリラクセーションがあり、PC鋼材のリラクセーション値が大きいものほどプレストレスの損失量は小さくなる。

【正解と解説】

正解:4

  • 選択肢1:適当
    プレストレスは、あらかじめコンクリートに圧縮応力を導入して引張応力を相殺するため、曲げひび割れ発生モーメント(ひび割れ発生荷重)を大幅に増大させます。一方、部材が破壊に至る終局曲げ耐力(最大耐力)は、引張側のPC鋼材が降伏(引張耐力に到達)し、圧縮側のコンクリートが圧壊することで決まるため、断面寸法や鋼材量が同じであれば、プレストレス導入の有無や導入量によって終局曲げ耐力はほとんど変化しません。
  • 選択肢2:適当
    ポストテンション方式のPCグラウトは、①PC鋼材の防食、②PC鋼材とコンクリートの一体化(付着の確保)を目的としてシース内に充填されます。ブリーディングによってシース上部に空隙が生じると鋼材腐食の原因となるため、低ブリーディング型グラウトが広く用いられます。また、防食上の観点から、グラウト中の全塩化物イオン量はセメント質量の 0.08% 以下(土木学会示方書、JASS 5の短期・標準)と厳しく制限されています。
  • 選択肢3:適当
    プレテンション方式は、定着具を用いずPC鋼材とコンクリートとの「付着力」のみによってプレストレスを導入します。部材端面では鋼材応力が解放されてゼロとなり、そこから付着によって応力が徐々にコンクリートへ伝達され、所定の距離(伝達長/トランスファー長)を経て有効プレストレスに達します。そのため、部材端部近傍のプレストレスは中央部よりも小さくなります。
  • 選択肢4:不適当
    PC鋼材のリラクセーションとは、鋼材のひずみ(長さ)を一定に保持した状態で、時間の経過とともに引張応力が自然に減少していく現象です。したがって、リラクセーション値が大きい鋼材を用いるほど、引張応力の減少量が大きくなり、コンクリートに導入されたプレストレスの損失量は「大きく」なります。プレストレスの損失を小さく抑えるためには、低リラクセーション品(JIS G 3536の記号「L」)が用いられます。

💡 本日の重要チェックポイント

  • プレストレスの損失要因の整理
    • 導入時・定着直後(瞬時損失):
      • 定着具のすべり(セットロス)
      • PC鋼材とシースとの摩擦(ポストテンション方式)
      • コンクリートの弾性変形(プレテンション方式、およびポストテンションの多段階緊張時)
    • 経時的な損失(時間依存損失):
      • コンクリートの乾燥収縮
      • コンクリートのクリープ
      • PC鋼材のリラクセーション
  • 曲げ挙動のまとめ
    • ひび割れ発生荷重:プレストレス導入により大幅に増大する。
    • 終局曲げ耐力:プレストレス導入の有無でほぼ同等(最大耐力は鋼材引張耐力とコンクリート断面寸法で決まる)。

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