コンクリート主任技士の試験対策として、定期配信の本日は「物性・力学的性質」および「設計・構造」の分野から、午後択一の理論・計算問題で頻出し、実務のたわみ制御・ひび割れ照査でも極めて重要となる「コンクリートの乾燥収縮およびクリープ(発生要因と影響因子)」に関する問題をお届けします。
コンクリートの時間依存的な変形挙動である「乾燥収縮」と「クリープ」について、配合条件(単位水量・骨材)、環境条件(湿度)、部材寸法(体積表面積比 V/S)、載荷条件(載荷材齢・応力比)が与える影響は確実にマスターしておきましょう。
【問題】コンクリートの乾燥収縮およびクリープに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) 乾燥収縮は、硬化後のコンクリート内部の毛細管水が外部へ蒸発・散逸する際に生じる毛細管張力などに起因して発生する現象であり、単位水量が大きくセメントペースト量が多いコンクリートほど収縮量は大きくなる。
- (2) クリープは、一定の持続応力を受けるコンクリートにおいて、弾性変形が生じた後も時間経過とともにひずみが増大する現象であり、作用応力が圧縮強度の 40〜50% 程度以下の範囲では、生じるクリープひずみは作用応力に概ね比例する。
- (3) 持続荷重を載荷する時点のコンクリートの材齢(載荷時材齢)が早い(若い)ほど、セメント水和物の組織形成が未熟で強度が低いため、長期的に発生するクリープひずみ(クリープ係数)は大きくなる。
- (4) 部材の体積・表面積比(V/S:部材の有効厚さ)が大きい(部材寸法が厚い・大きい)部材ほど、コンクリート内部からの水分の逸散が容易になるため、乾燥収縮ひずみおよびクリープひずみは大きくなる。
【正解】
(4)
【解説】
- (1) 正しい:乾燥収縮の発生メカニズムに関する正しい記述です。硬化体内部の細孔(毛細管孔)から水分が蒸発すると、水のメニスカス(表面張力)によって毛細管張力(負圧)が発生し、組織が引き寄せられて収縮します。収縮するのはセメントペースト部分であるため、単位水量や単位セメント量(ペースト容積)が大きいほど収縮量は増大します。
- (2) 正しい:クリープ現象および線形クリープ領域に関する正しい記述です。持続荷重によってC-S-Hゲルの滑りや水分の移動が起こり、ひずみが時間の経過とともに増大します。破壊に至らない通常の使用限界状態(圧縮強度の 40 ~ 50% 以下)では、クリープひずみは作用応力に比例(線形クリープ)します。
- (3) 正しい:載荷時材齢の影響に関する正しい記述です。打設後間もない若い材齢で荷重を載荷すると、組織がまだ軟弱で変形しやすいため、クリープひずみ(およびクリープ係数 phi)は非常に大きくなります。材齢が進んで強度が十分に発現してから載荷するほどクリープは小さく抑えられます。
- (4) 誤り(これが正解): 部材寸法(体積・表面積比 V/S)の影響に関する超重要・頻出の引っ掛け問題です。
- 体積・表面積比(V/S)が大きい(断面が厚い・マス状の部材): 表面積に対して体積が大きいため、中心部の水分が外部へ蒸発するまでに非常に長い時間がかかります。内部が湿潤に保たれるため、乾燥に伴う乾燥収縮ひずみおよび乾燥クリープひずみは「小さく(少なく)」なります。
- 逆に、部材厚さが薄い部材(V/S が小さい部材)ほど、水分の蒸発が早いため乾燥収縮・クリープともに大きくなります。記述は「V/S が大きいほど水分の逸散が容易になり、ひずみが大きくなる」としているため、因果関係が完全に逆であり明確な誤りです。
要点チェック(乾燥収縮・クリープの影響要因まとめ)
| 要因・条件 | 乾燥収縮・クリープが「大きくなる」条件 | 乾燥収縮・クリープが「小さくなる」条件 |
| 配合(ペースト量) | 単位水量・セメント量が多い(W/C が大) | 単位水量を抑制・骨材量が多い |
| 使用骨材の性質 | ヤング率が小さい骨材(軟らかい骨材) | ヤング率が大きい骨材(硬い石灰石・玄武岩等) |
| 環境湿度 | 周囲の湿度が低い(乾燥環境) | 周囲の湿度が高い(湿潤・水中環境) |
| 部材寸法(V/S) | 部材が薄い(V/S が小 ➔ 乾燥が速い) | 部材が厚い(V/S が大 ➔ 乾燥しにくい) |
| 載荷材齢(クリープ) | 載荷時の材齢が若い(強度が未熟) | 載荷時の材齢が遅い(組織が緻密化) |
「骨材は収縮しない(ペーストの収縮を拘束する骨組み)」「厚い部材は内部が乾きにくいので収縮・クリープが小さい」という物理現象のイメージを押さえておくと、どんな組み合わせの選択肢でも一瞬で見抜くことができます。
本日も一日、ご安全に!合格に向けて着実に実力を積み上げていきましょう。