問題(ひび割れ)

コンクリート主任技士の試験対策として、今朝は「維持管理・補修工法」の分野から、実務の補修設計や点検で最も適用頻度が高く、択一式・小論文(記述)ともに必須の得点源である「ひび割れ補修工法(表面被覆工法・注入工法・充填工法)の選定基準と特徴」に関する問題をお届けします。

ひび割れ幅の大きさ(0.2mm未満・0.2〜1.0mm・1.0mm超など)や「ひび割れの挙動(変動の有無)」に応じた工法選定・材料選定の基準は確実にマスターしておきましょう。

【問題】コンクリート構造物に発生したひび割れの補修工法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  • (1) ひび割れ幅が 0.2 mm 未満の微細なひび割れに対しては、ひび割れ内部まで樹脂を圧入するのが困難であるため、コンクリート表面に樹脂やセメント系材料を塗布して外部からの水分・二酸化炭素の侵入を遮断する「表面被覆(塗布)工法」が一般に適用される。
  • (2) ひび割れ幅が 0.2 ~ 1.0 mm 程度のひび割れに対しては、エポキシ樹脂等の注入材をゴムやスプリングの復元圧を利用して低圧で長時間かけて確実に充填する「低圧連続注入工法」が広く用いられる。

出典: 一般社団法人 住宅基礎コンクリート保存技術普及協会

  • (3) 温度変化や荷重変動によって開閉を繰り返す「挙動(動き)のあるひび割れ」に対してエポキシ樹脂を用いた注入補修を行う場合、母材との一体性を高めて強度を回復させるため、できる限り高弾性・高強度の硬質エポキシ樹脂を選定しなければならない。
  • (4) ひび割れ幅が 1.0 mm 以上の比較的大きなひび割れや、コンクリート表層部の劣化を伴うひび割れに対しては、ひび割れに沿ってコンクリートをU字状またはV字状にカット(目地切り)し、シーリング材や可とう性エポキシ樹脂、ポリマーセメントモルタル等を充填する「ひび割れ充填工法」が適用される。

【正解】

(3)

【解説】

  • (1) 正しい:表面被覆(塗布)工法の適用基準です。ひび割れ幅が 0.2 mm 未満(微細ひび割れ)では注入ノズルからの浸透が難しいため、表面から浸透・被覆させる工法で耐久性(遮断性)を回復させます。
  • (2) 正しい: 注入工法(低圧連続注入工法)に関する正しい記述です。高圧で一気に注入すると内部の空気を巻き込んで未充填が生じたり、コンクリートを割裂させたりするリスクがあるため、ゴムやシリンジの微圧を利用して奥深くまで充填する低圧連続注入が標準的です。
  • (3) 誤り(これが正解): ひび割れの挙動と補修材料の選定に関する超重要・頻出の引っ掛け問題です。
    • 挙動のない(静止した)ひび割れ: 構造的な一体性や耐力を回復させるため、硬化後に強度の出る「硬質形エポキシ樹脂」やセメント系注入材を用います。
    • 挙動のある(変動する)ひび割れ: 温度変化や交通荷重でひび割れが開閉するため、硬質な樹脂を入れると追従できずに樹脂界面や隣接部で「再ひび割れ」が発生します。そのため、伸び能力のある「軟質形(可とう性・弾性)エポキシ樹脂」やシーリング材を選定しなければなりません。「高弾性・高強度の硬質エポキシ樹脂を選定する」とした記述は明確な誤りです。
  • (4) 正しい: 充填工法(Uカット・Vカットシール材充填工法)に関する正しい記述です。幅が大きいひび割れ(1.0 mm以上)に対して溝を掘り、変形に追従できる弾性シーリング材やモルタルを確実に目地詰めします。

要点チェック(ひび割れ補修工法の選定マップ):

  • ひび割れ幅 0.2 mm:表面被覆(塗布)工法(防水・遮断目的)
  • ひび割れ幅 0.2 ~ 1.0 mm:注入工法(低圧連続注入工法が主流)
  • ひび割れ幅 ≤ 1.0 mm:充填工法(Uカット・Vカット工法)
  • ひび割れの挙動:
    • 静止ひび割れ(耐力回復) ➔ 硬質エポキシ樹脂
    • 変動ひび割れ(追従性重視) ➔ 可とう性(軟質・弾性)樹脂 / シーリング材

「動くひび割れにガチガチの硬い樹脂を入れると割れる(だから軟質・可とう性を使う)」という物理的挙動をイメージしておけば、記述式・論文での材料選定でも迷いません。

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