問題(セメント)

セメントクリンカーの組成化合物および各種ポルトランドセメントの特性に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. エーライト(C₃S)は水和反応速度が比較的速く、初期から材齢28日頃までの強度発現に大きく寄与する。一方、ビーライト(C₂S)は水和反応が緩慢であるが、材齢28日以降の長期的な強度増進に寄与し、水和熱が小さい。
  2. アルミネート相(C₃A)は注水直後から急激に水和して多量の水和熱を発生するため、セメント製造時に適量のせっこうを添加してエトリンガイトを生成させることで、急激な凝結(瞬結)を防止している。
  3. 中庸熱ポルトランドセメント(JIS R 5210)は、水和熱を低減させるため、鉱物組成としてアルミン酸三カルシウム(C₃A)の上限値が規定されているとともに、初期強度を確保するためにけい酸三カルシウム(C₃S)の下限値が規定されている。
  4. 耐硫酸塩ポルトランドセメント(JIS R 5210)は、硬化後に外部から浸入した硫酸塩と反応して膨張性の二次エトリンガイトを生成するのを防ぐため、アルミン酸三カルシウム(C₃A)の含有率が 4% 以下に制限されている。

【正解と解説】

正解:3

  • 選択肢1:適当
    C₃S(けい酸三カルシウム)は水和速度が比較的速く、材齢28日までの強度発現を主導します。一方、C₂S(けい酸二カルシウム)は水和反応が遅く、材齢28日以降の長期強度増進に寄与します。C₂S は水和熱が小さく、乾燥収縮も小さい特徴があります。
  • 選択肢2:適当
    C₃A(アルミン酸三カルシウム)は水との反応性が非常に高く、そのままでは注水直後に瞬結(フラッシュセット)を起こします。そのため、セメント粉砕時に適量のせっこう(SO₃源)を添加し、C₃A の初期溶解時にエトリンガイトの保護被膜を形成させて反応を一時的に停滞させ、急結を防いでいます。
  • 選択肢3:不適当
    中庸熱ポルトランドセメントは、水和発熱速度と総発熱量を抑えるために、発熱の大きい C₃A と C₃S の含有率を制限しています。JIS R 5210 において、中庸熱ポルトランドセメントの鉱物組成は C₃S ≤ 50%(上限値)、C₃A ≤ 8%(上限値) と規定されており、C₃S の下限値は規定されていません(C₂S の下限値 ≥ 40% が規定されているのは低熱ポルトランドセメントです)。
  • 選択肢4:適当
    土壌や海水中の硫酸塩(SO₄²⁻)が浸入すると、硬化体中のアルミン酸カルシウム系水和物(モノサルフェート等)と反応して再びエトリンガイト(二次エトリンガイト)を生成し、結晶成長に伴う体積膨張でひび割れや組織破壊(硫酸塩劣化)を引き起こします。耐硫酸塩ポルトランドセメントでは、この反応の元となる C₃A を 4% 以下に厳しく制限しています。

💡 本日の重要チェックポイント

  • クリンカー4大化合物の特性一覧
    化合物名略号水和速度寄与する強度水和熱特徴けい酸三カルシウムC₃S比較的速い材齢28日以内(初期〜中期)中早強セメントに多量含有けい酸二カルシウムC₂S遅い材齢28日以降(長期)小中庸熱・低熱セメントに多量含有アルミン酸三カルシウムC₃A非常に速い材齢1日以内大耐硫酸塩・中庸熱・低熱で上限規制鉄アルミン酸四カルシウムC₄AFかなり速い強度寄与は小さい小耐硫酸塩性に優れる
  • JIS R 5210 の鉱物組成規定
    • 中庸熱ポルトランドセメント:C₃S ≤ 50%, C₃A ≤ 8%
    • 低熱ポルトランドセメント:C₂S ≥ 40%, C₃A ≤ 6%
    • 耐硫酸塩ポルトランドセメント:C₃A ≤ 4%

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA