鉄筋コンクリート構造物の塩害による劣化進行過程および防食対策に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 潜伏期は、コンクリート表面から侵入した塩化物イオンが内部へ浸透・拡散し、鋼材位置における塩化物イオン濃度が腐食発生限界濃度に達するまでの期間であり、この期間中は鋼材の腐食は開始していない。
- 進展期は、鋼材位置の塩化物イオン濃度が腐食発生限界濃度を超えて鋼材の腐食が開始し、生成された錆の体積膨張圧によってかぶりコンクリートに腐食ひび割れが発生するまでの期間である。
- 加速期は、腐食ひび割れの発生に伴い酸素や水分の供給が促進されて腐食速度が急激に増大する期間であり、この段階で鋼材断面の著しい欠損により構造部材の耐力や剛性が大きく低下する。
- 脱塩工法は、コンクリート表面に設置した仮設陽極と内部の鋼材(陰極)との間に直流電流を一定期間流し、負の電荷をもつ塩化物イオンを電気泳動によってコンクリート外部へ抽出・除去する工法である。
【正解と解説】
正解:3
- 選択肢1:適当
潜伏期は、外部から塩化物イオンが侵入・拡散し、鉄筋位置の塩化物イオン濃度が鋼材腐食発生限界濃度(一般に $1.2kg/㎥ 程度)に達するまでの期間です。この期間中は不動態皮膜が保護されているため、鋼材の腐食は開始していません。 - 選択肢2:適当
進展期は、塩化物イオン濃度が限界値を超えて不動態皮膜が局所的に破壊され、鋼材の腐食が開始してから、錆の体積膨張(元の鉄の2〜3倍)によってかぶりコンクリートに腐食ひび割れが発生するまでの期間です。 - 選択肢3:不適当
腐食ひび割れの発生後に酸素や水分が急激に供給されて腐食が進行し、「かぶりコンクリートの剥離・剥落、錆汁の流出、第三者被害の危険性増大」が生じる段階は加速期です。鋼材断面の著しい減少やコンクリートとの付着喪失により、「構造部材の耐力・剛性が低下(耐荷性能・安全性の低下)」するのは、その次の劣化期です。 - 選択肢4:適当
脱塩工法は、コンクリート表面に設置した陽極材(電解質溶液を含む)と内部鉄筋(陰極)との間に直流電流を一定期間(約1〜2か月)通電させ、負イオンである塩化物イオン(Cl⁻)を陽極側(コンクリート外部)へ電気泳動させて抽出する電気化学的改修工法です。
💡 本日の重要チェックポイント
- 塩害の劣化進行4段階(土木学会 維持管理編)
- 潜伏期:塩化物イオンの浸透・拡散 →鋼材腐食の開始(限界濃度到達)
- 進展期:腐食進行・錆の膨張 →コンクリート腐食ひび割れの発生
- 加速期:水分・酸素の急速供給、腐食加速 →かぶりの剥離・剥落、第三者影響・美観低下
- 劣化期:鉄筋断面減少・付着切れ →部材耐力・剛性の低下(耐荷力低下)
- 電気化学的防食工法の分類
- 電気防食工法:継続通電により鋼材電位を卑(マイナス)に維持し、腐食反応を恒久的に抑制。
- 脱塩工法:一定期間通電し、Cl⁻ を外部へ電気泳動で抽出。
- 再アルカリ化工法:アルカリ溶液を用いて通電し、中性化したコンクリートのpHを回復。
- 電着工法:通電により海水中のカルシウムやマグネシウムを不溶性化合物としてひび割れ・表面に析出・閉塞。