コンクリート主任技士の試験対策として、定期配信の本日は「設計・構造」の分野から、午後択一の計算・理論問題の大きな得点源であり、実務の断面設計・ひび割れ照査でも重要となる「RC梁のせん断破壊メカニズムとせん断補強筋(スターラップ)の役割」に関する問題をお届けします。
せん断補強筋が受け持つせん断力(トラス機構)の考え方や、曲げひび割れから斜め引張ひび割れへと進展する破壊モードは確実にマスターしておきましょう。
【問題】鉄筋コンクリート(RC)部材のせん断挙動およびせん断補強に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) RC梁に荷重を載荷していくと、曲げ応力とせん断応力の複合応力によって、部材の側面(支点付近など)に斜め 45° 方向の「斜め引張ひび割れ(腹部せん断ひび割れ・曲げせん断ひび割れ)」が発生する。
- (2) せん断破壊は、引張鉄筋が降伏して大きなたわみが生じた後に破壊する「曲げ引張破壊」に比べて、ひび割れの発生から破壊に至るまでの変形が小さく、突発的かつ脆性的に破壊するため、設計上極めて危険である。
- (3) トラス機構(トラスモデル)の考え方において、せん断補強筋(スターラップ)を配置したRC梁の終局せん断耐力(Vu)は、コンクリートが負担するせん断耐力(Vc)と、せん断補強筋が負担するせん断耐力(Vs)の和(Vu = Vc + Vs)として算定される。
- (4) せん断補強筋(スターラップ)の配置間隔を狭くして補強筋比を極めて大きくしていくと、せん断補強筋が降伏する前に、圧縮ストラット(斜めコンクリート)が耐えきれずに圧壊する「斜め圧縮破壊(ウェブ圧壊)」を起こすリスクは完全に解消される。
【正解】
(4)
【解説】
- (1) 正しい:斜め引張ひび割れの発生メカニズムに関する正しい記述です。曲げモーメントとせん断力が同時に作用する区間では、主引張応力の方向が斜めになるため、材軸に対して概ね 45° 前後の斜めひび割れが発生します。
- (2) 正しい:せん断破壊(脆性破壊)の危険性に関する正しい記述です。曲げ破壊のように「鉄筋が伸びてたわみが大きくなる」という前兆(粘り強さ・延性)を示さず、斜めひび割れが急速に進展して一気に崩壊に至るため、構造設計では「曲げ破壊先行型(せん断耐力 > 曲げ耐力)」となるように安全側に設計します。
- (3) 正しい: せん断耐力の算定式(トラス機構)に関する正しい記述です。
Vu = Vc + Vs- $V_c$:コンクリート自体の負担分(骨材の噛み合い作用、ダウエル作用、健全な圧縮部コンクリートの負担)
- $V_s$:せん断補強筋(スターラップ)が降伏して負担する引張力これらを足し合わせて部材全体のせん断耐力を求めます。
- (4) 誤り(これが正解): せん断補強の上限と斜め圧縮破壊に関する超重要・頻出の引っ掛け問題です。スターラップ(せん断補強筋)を大量に配置しても、トラスモデルにおける「斜めの圧縮部材(圧縮ストラット)」として働くコンクリート自身の圧縮強度には限界があります。せん断補強筋を過大に入れると、鉄筋が降伏する前にコンクリートの圧縮ストラットが先に押し潰される「斜め圧縮破壊(ウェブ圧壊)」を引き起こします。そのため、設計基準ではせん断耐力の上限値(Vmax)が定められており、鉄筋を増やしても斜め圧縮破壊が「完全に解消される」わけではありません。記述は明確な誤りです。
要点チェック(せん断挙動と設計の最重要ルール):
- 破壊の性質: せん断破壊は脆性破壊(突発的で危険) ➔ 設計は大原則として「曲げ破壊先行(延性確保)」とする。
- せん断耐力の構成:Vu = Vc(コンクリート負担分)+Vs(スターラップ負担分)。
- 過大補強の限界: スターラップを入れすぎると、鉄筋が降伏する前にコンクリートが潰れる**「斜め圧縮破壊(ウェブ圧壊)」**が発生する ➔ せん断耐力には上限(Vmax)が存在する。
「鉄筋を入れすぎても、最終的にはコンクリート自身が潰れる限界(斜め圧縮破壊)がある」という考え方は、曲げの「過補強(圧縮破壊)」と共通する構造力学の根本ルールです。