鉄筋コンクリート(RC)部材の力学的性質、曲げ耐力およびせん断耐力の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 鉄筋コンクリート梁の曲げ耐力(終局曲げモーメント)の算定においては、「変形後も断面は平面を保持する」という平面保持の仮定に基づき、部材軸方向のひずみは中立軸からの距離に比例して直線分布するものとして計算する。
- 梁の曲げ破壊において、引張鉄筋比が釣合鉄筋比(平衡鉄筋比)以下である場合、引張鉄筋が先に降伏した後に大きな変形を伴いながら圧縮側コンクリートの圧壊に至る「曲げ引張破壊」となり、部材に高い変形性能(靭性)が付与される。
- 柱部材に配置される帯鉄筋(フープ筋)やらせん鉄筋は、主鉄筋の位置保持およびせん断力の分担に寄与するだけでなく、内部のコアコンクリートを横方向に拘束(コンファインド)することによって、部材の圧縮耐力と変形性能(靭性)を向上させる効果をもつ。
- 鉄筋コンクリート梁部材の設計においては、地震時や過大荷重時に部材が急激な耐力低下を起こすのを防ぐため、曲げモーメントによる破壊よりもせん断力による破壊を先行させるように断面寸法および配筋を決定しなければならない。
【正解と解説】
正解:4
- 選択肢1:適当
梁部材の断面解析では、「平面保持の仮定(ベルヌーイ・オイラーの仮定)」が適用されます。荷重作用により曲げ変形が生じた後も、部材軸に直角な断面は平面を保つとみなすため、断面内の軸方向ひずみは中立軸からの距離に正比例して直線的に分布します。終局時(破壊直前)の耐力算定においてもこの仮定を基本とします。 - 選択肢2:適当
釣合鉄筋比(平衡鉄筋比)とは、「引張鉄筋が降伏すると同時に圧縮側コンクリートが終局ひずみに達して圧壊する」ような鉄筋比です。- 釣合鉄筋比以下(通常設計):引張鉄筋が先に降伏し、開口ひび割れや大きなたわみ(変形)を生じた後に最終的な破壊に至る「曲げ引張破壊(延性破壊)」となります。前兆が明確で粘り強いため、構造設計上望ましい形態です。
- 釣合鉄筋比超(過大配筋):鉄筋が降伏する前に圧縮側コンクリートが突然破壊する「曲げ圧縮破壊(脆性破壊)」となります。
- 選択肢3:適当
柱の帯鉄筋(フープ筋)やらせん鉄筋は、主鉄筋の座屈防止やせん断補強筋としての役割に加え、内部のコンクリートを三軸応力状態で横拘束するコンファインド効果を発揮します。これにより、コアコンクリートの圧縮強度が増大するとともに、最大耐力以降の変形性能(靭性)が飛躍的に向上します(特に円形らせん鉄筋で顕著)。 - 選択肢4:不適当
せん断破壊は、斜め引張ひび割れが急速に貫通し、目立った変形の前兆なしに突然破壊する「脆性破壊(急激な破壊)」です。一方、曲げ引張破壊は、鉄筋の降伏に伴い大きなたわみを生じながらエネルギーを吸収する「延性破壊(粘り強い破壊)」です。
したがって、構造設計・耐震設計の絶対的な大原則は「曲げ破壊先行」であり、部材が曲げ降伏する前に脆性的なせん断破壊を起こさないよう、せん断耐力を曲げ耐力(曲げ降伏時に作用するせん断力)よりも十分に大きく設計しなければなりません。
💡 本日の重要チェックポイント
- 曲げ破壊 vs せん断破壊の比較
区分曲げ引張破壊せん断破壊破壊性状延性破壊(粘り強い)脆性破壊(急激・突発的)前兆大きなたわみ、ひび割れの拡大ほとんど前兆がない設計上の原則先行させる(望ましい)絶対に先行させてはならない - 曲げ耐力算定の基本仮定
- 平面保持の仮定(ひずみは中立軸からの距離に比例)
- コンクリートの引張抵抗は無視(引張力はすべて鉄筋が負担)
- 鉄筋とコンクリートの完全付着
- 圧縮応力は等価応力ブロック(矩形応力等)でモデル化
- トラス理論(せん断耐力)
- せん断補強筋(スターラップ):斜め45°の圧縮ストラット(コンクリート)と引張材(スターラップ)によるトラス機構としてせん断力を負担(Vu = Vc + Vs)。