コンクリート主任技士の試験対策として、今朝は「耐久性・環境」の分野から、ASR(アルカリシリカ反応)や塩害と並び、近年の試験でメカニズムや評価手法(環境条件)が深掘りして問われる「化学的侵蝕(酸性降下物・硫酸塩侵蝕)」に関する問題をお届けします。
温泉地域や下水道施設、酸性土壌などで生じるコンクリートの劣化メカニズム(エトリンガイトの遅れ生成等)は、択一式だけでなく記述式(劣化原因の同定・補修計画)でも重要な得点源となります。
【問題】コンクリートの化学的侵蝕(酸や硫酸塩による劣化)に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) 温泉地帯や下水道施設において、硫化水素(H₂S)が硫黄酸化細菌の作用によって「硫酸(H₂SO₄)」に変化すると、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応して石膏(CaSO₄・2H₂O)等を生成し、組織が溶出・脆化する。
- (2) 海水や地下水に含まれる硫酸塩イオン(SO₄²⁻)がコンクリート内部に侵入すると、セメント水和物である単硫酸アルミネート等と反応して「エトリンガイト(3CaO・Al₂O₃・ 3CaSO₄ ・32H₂O)」を生成し、その結晶成長に伴う膨張圧によってひび割れや崩壊を引き起こす。
- (3) 酸性雨や酸性河川水によるコンクリートの侵蝕(酸攻撃)では、水酸化カルシウムなどのセメント水和物が酸と反応して溶出するため、コンクリート表面の骨材が浮き出るような磨耗・削失現象が生じる。
- (4) 硫酸塩侵蝕に対する抵抗性を高めるためのセメント材料としては、セメント中のアルミネート相(C₃A:アルミン酸三カルシウム)の含有率が高い「早強ポルトランドセメント」を使用するのが極めて有効である。
【正解】
(4)
【解説】
- (1) 正しい: 下水道施設などで問題となる酸性腐食(細菌性硫酸腐食)のメカニズムです。汚水中の硫化水素が細菌によって強力な「硫酸」に変わり、アルカリ性のセメント水和物を直接溶かして組織を著しく分解・脆化させます。
- (2) 正しい: 硫酸塩侵蝕(膨張破壊)のメカニズムです。外部から侵入した硫酸塩イオンが内部の水和物(アルミネート系)と反応し、体積が非常に大きい「エトリンガイト(セメントバチルス)」を再度生成(遅れて生成)することで、内部から大きな膨張圧が生じてひび割れや組織の崩壊を招きます。
- (3) 正しい: 酸による溶出作用に関する正しい記述です。酸(pHの低い水)はセメントの骨格であるカルシウム分を中和・溶出させるため、ペースト部が消失して骨材が露出するなどの損傷が生じます。
- (4) 誤り(これが正解): 耐硫酸塩性とセメント鉱物組成に関する超頻出の引っ掛け問題です。硫酸塩侵蝕(エトリンガイト生成による膨張)の原因となるのは、セメント中の「C₃A(アルミネート相)」です。そのため、耐硫酸塩性を高めるには C₃A の含有率を「低く」抑えた「耐硫酸塩ポルトランドセメント」や、水酸化カルシウム・C₃A を消費・希釈する「高炉セメントB種」などを使用する必要があります。早強ポルトランドセメントは C₃A 量が多く、むしろ硫酸塩攻撃に弱いため「極めて有効」とした記述が明確な誤りです。
要点チェック(化学的侵蝕と対策のまとめ):
- 硫酸塩侵蝕の原因: 外部の SO₄²⁻ + セメント中の C₃A ➔ エトリンガイト生成(膨張破壊)
- 有効なセメント: 耐硫酸塩ポルトランドセメント(C₃A を制限)、高炉セメントB種(ポゾラン反応・高炉スラグによる組織緻密化およびカルシウム低減)
- NGなセメント: 早強ポルトランドセメント(C₃A 量が多い)
「硫酸塩の攻撃ターゲットは C₃A(アルミネート相)であるため、C₃A が多いセメントはNG」という因果関係を押さえておくと、混和材料やセメント品種の選択肢問題で迷わなくなります。