コンクリート主任技士の試験対策として、本日は「環境・耐久性(劣化メカニズム)」の分野から、ASRや中性化と並び択一・記述(論述)ともに最重要テーマである「塩害と鉄筋腐食(限界塩化物イオン量と防食)」に関する問題をお届けします。
鉄筋が腐食を開始する「発錆限界値」と、練混ぜ時に許容される「塩化物イオン総量規制」の数値の違いは、試験で非常に良く狙われる超頻出ポイントです。
【問題】コンクリートの塩害および鉄筋の腐食に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) 通常の健全なコンクリート内部では、セメントの水和反応で生じる水酸化カルシウム等によって高アルカリ性(pH 12〜13)に保たれており、鉄筋表面には極めて薄い「不動態被膜」が形成されて保護されている。
- (2) 外部からの飛来塩分や構造物内部の塩化物イオンが鉄筋位置まで拡散し、その塩化物イオン濃度が鋼材腐食発生の限界値(一般に 1.2 kg/m³ 程度)を超えると、不動態被膜が局所的に破壊されて鉄筋の腐食が開始する。
- (3) 新鮮コンクリートの練混ぜ時に材料(細骨材や混和剤等)から持ち込まれる塩化物イオン総量の許容上限値は、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)において、原則としてコンクリート1㎥あたり 1.5 kg 以下と規定されている。
- (4) 塩害環境下に建設される構造物の耐久性を向上させる対策として、設計かぶり厚さを大きくすること、水セメント比を小さくして組織を緻密化すること、および高炉セメントB種等の混合セメントを使用することが有効である。
【正解】
(3)
【解説】
- (1) 正しい: 鉄筋の防食メカニズムに関する正しい記述です。コンクリート内部が強アルカリ性であるおかげで、鉄筋の表面には数ナノメートルという非常に薄く強固な「不動態被膜($\gamma\text{-Fe}_2\text{O}_3$)」が形成され、酸素や水があっても鉄が錆びないようガードされています。
- (2) 正しい: 鉄筋の腐食開始限界濃度(発錆限界塩化物イオン量)に関する正しい記述です。環境条件等にもよりますが、標準的には1.2 kg/m³ 程度(あるいはセメント質量に対して 0.3〜0.4% 程度)の塩化物イオンが鉄筋位置に集まると、不動態被膜が破壊されて局所的なピッティング(点食)が発生し始めます。
- (3) 誤り(これが正解): 超重要かつ超定番の数値引っ掛け問題です。コンクリートの製造時(練混ぜ時)に材料から持ち込まれる塩化物イオン量の規定値は、原則として「0.30 kg/m³ 以下」です。「1.5 kg 以下」という数字は完全に誤りです。(※1.2〜1.5 kg/m³ という数値は、上記の「鉄筋が腐食を開始する限界濃度」の数値であり、製造時の許容値「0.30 kg/m³」と受験生を混同させる目的で非常によく出題されます)。
- (4) 正しい: 塩害に対する予防保全策に関する正しい記述です。かぶりを大きくして塩分が届くまでの時間を稼ぎ、水セメント比の低減や高炉セメントB種の使用によって組織を緻密化させ、塩化物イオンの侵入速度(拡散係数)を小さく抑えます。
要点チェック(塩害に関する「2つの重要数値」):
- 練混ぜ時の塩化物イオン総量規制(JIS A 5308): 0.30 kg/m³ 以下(製造時のスタート地点でのルール)
- 鉄筋の発生限界塩化物イオン量(発錆限界値): 1.2 kg/m³ 程度(将来的にこの数値に達すると錆び始めるゴールライン)
小論文などで「塩害のメカニズムと耐久性向上対策」が出題された際にも、この「不動態被膜の破壊」「0.30 kg/m³」「1.2 kg/m³」「高炉セメントB種による拡散抑制」といった専門用語と数値をセットで記述できるよう整理しておきましょう。
本日も1日、ご安全に!合格に向けて着実に歩みを進めていきましょう。