コンクリート主任技士の試験対策として、定期配信の本日は「耐久性・維持管理(診断・補修)」の分野から、午後択一・小論文(記述)ともに必須の得点源であり、現場の劣化診断で必ず問われる「コンクリートの非破壊・微破壊試験による各種物性・劣化の評価方法」に関する問題をお届けします。
構造物を壊さずに(あるいは影響を最小限にして)健全性を診断する各試験手法の測定対象と原理の組み合わせは確実にマスターしておきましょう。
【問題】コンクリート構造物の劣化診断および品質評価に用いられる試験方法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) コンクリートの中性化深さを測定する試験(JIS A 1152)では、コア試料や穿孔(ドリル)粉末の露出面に 1% フェノールフタレイン溶液を噴霧し、赤紫色の呈色反応(アルカリ性領域)が起こらない無色領域の境界までの深さを中性化深さとして測定する。
- (2) 内部の空隙やジャンカ、ひび割れ深さを探査する「超音波伝ぱ速度法」では、コンクリートが緻密で圧縮強度が高い部分ほど、超音波の伝ぱ速度が遅くなる性質を利用して評価する。
- (3) コンクリート内部の鉄筋位置や被り厚さを非破壊で探査する手法として、「電磁誘導法」(鉄筋と探査機器の磁界の相互作用を利用)や「電磁波レーダ法」(反射波の到達時間を利用)が広く用いられている。
- (4) コンクリートの塩化物イオン濃度を非破壊または微破壊で評価する手法として、採取した粉末試料を希硝酸で抽出して電位差滴定を行う「電位差滴定法(JIS A 1154)」や、蛍光X線分析法などが用いられる。
【正解】
(2)
【解説】
- (1) 正しい: 中性化深さ測定試験(JIS A 1152)の基本仕様です。フェノールフタレイン溶液は pH 8.2〜10.0 で無色から赤紫色に変化します。健全なアルカリ性(pH 12〜13)の部分は「赤紫色」に呈色し、中性化した部分は「無色」のまま残るため、表層から無色部までの距離を測定します。
- (2) 誤り(これが正解): 波動の伝播メカニズムに関する超定番のあべこべ(逆)問題です。超音波は、空隙が少なく緻密(高密度・高強度)な媒体の中ほど素早く伝わります。そのため、コンクリートが健全で圧縮強度が高い部分ほど、超音波伝ぱ速度は「速く(大きく)」なります(普通コンクリートで約 3,800 ~ 4,500 m/s)。内部に空隙やひび割れがあると速度が遅くなります。「速度が遅くなる」とした記述は明確な誤りです。
- (3) 正しい:かぶり厚さ・鉄筋探査の代表的非破壊手法です。深さ約 10 cm 程度までの精密測定には「電磁誘導法」、より深い位置や広範囲の探査には「電磁波レーダ法」が適しており、両者の特徴を把握しておく必要があります。
- (4) 正しい:塩化物イオンの測定手法に関する正しい記述です。JIS A 1154 に規定される電位差滴定法は精度の高い標準試験方法であり、小径ドリルで採取した粉末を用いて鉄筋位置での塩分量を正確に把握します。
要点チェック(非破壊・微破壊試験のポイント):
- 中性化測定:フェノールフタレイン 1% 溶液 ➔ アルカリ(健全)= 赤紫 / 中性化= 無色。
- 超音波速度:高強度・緻密 ➔ 速度「速い」 / ひび割れ・欠陥あり ➔ 速度「遅い」。
- 鉄筋かぶり探査:電磁誘導法(浅く高精度) vs 電磁波レーダ法(深部・広範囲)。
「超音波は硬くて詰まっている場所ほど早く伝わる(音速が上がる)」という物理の基本イメージを頭に入れておけば、文言の引っ掛けに一瞬で対応できます。