コンクリートの化学的侵食、下水施設における腐食、カルシウム分の溶脱およびエフロレッセンスに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 外部から浸入した硫酸塩によるコンクリートの侵食は、セメント硬化体中の水酸化カルシウムやアルミン酸カルシウム系水和物と硫酸イオンが反応して石こうやエトリンガイトを生成し、その結晶成長に伴う体積膨張圧によってひび割れや崩壊を引き起こす現象である。
- 下水処理施設や管路の水面より上部(気相部)のコンクリートの劣化は、汚水中の硫酸塩還元細菌によって発生した硫化水素ガスが、コンクリート表面に生息する硫黄酸化細菌によって酸化されて硫酸を生じ、この硫酸がセメント水和物を分解・侵食する現象である。
- 軟水や地下水に長期間接するコンクリート構造物において生じるカルシウム分の溶脱は、水酸化カルシウムやケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)からカルシウムイオンが水中に溶解・流出して硬化体組織が多孔質化する現象であり、水結合材比を小さくすることやシリカフュームなどのポゾラン材を用いることが抵抗性の向上に有効である。
- エフロレッセンス(白華)は、コンクリート内部に浸入した酸性雨がセメント水和物中のアルミニウム成分と反応し、水溶性の硫酸アルミニウムとしてコンクリート表面に析出する現象であり、構造体の耐荷力および剛性を早期に著しく低下させる致命的な劣化現象である。
【正解と解説】
正解:4
- 選択肢1:適当
硫酸塩による侵食(硫酸塩劣化)は、土壌や地下水、海水に含まれる硫酸イオン(SO₄²⁻)が浸入し、硬化体中の水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)と反応して二水石こうを生成し、さらにこれがアルミン酸カルシウム系水和物(モノサルフェート等)と反応してエトリンガイト(二次エトリンガイト)を生成します。エトリンガイトの結晶成長に伴う体積膨張圧により、コンクリートがひび割れ、組織崩壊に至ります。 - 選択肢2:適当
下水施設におけるコンクリートの劣化は、代表的な生物化学的侵食です。- 汚水中の嫌気性環境下で、硫酸塩還元細菌が硫酸塩から硫化水素ガス(H₂S)を生成する。
- 気相部(水面上の壁や天井)に揮散した硫化水素が、湿潤なコンクリート表面の好気性菌である硫黄酸化細菌によって酸化され、高濃度の硫酸(H₂SO₄)が生成される。
- この硫酸がアルカリ性のセメント水和物を中和・分解し、石こう化させて泥状に崩壊(スライム化)させます。
- 選択肢3:適当
カルシウム分の溶脱(リーチング)は、イオン濃度の低い軟水、純水、雨水や地下水と長期間接触することにより、水酸化カルシウムが溶解して溶出し、さらに C-S-H ゲルの脱カルシウム化が進む現象です。これにより硬化体が多孔質化して強度が低下します。水結合材比の低減により組織を緻密化することや、シリカフューム・高炉スラグ微粉末・フライアッシュ等の混和材を用いて遊離の水酸化カルシウムを消費・固定化することが溶脱抵抗性の向上に極めて有効です。 - 選択肢4:不適当
エフロレッセンス(白華)は、硬化体内部の可溶性成分(主として水酸化カルシウム Ca(OH)₂ やアルカリ金属イオン)が水分とともに表面に浸出し、水分が蒸発する際に空気中の二酸化炭素(CO₂)と反応して、難溶性の炭酸カルシウム(CaCO₃)として白色沈着する現象です(酸性雨とアルミニウムの反応ではありません)。また、エフロレッセンスは美観を損ねたり内部に水みちが存在する証拠にはなりますが、それ自体が構造体の耐荷力や剛性を早期に著しく低下させるような致命的な劣化ではありません。
💡 本日の重要チェックポイント
- 化学的劣化・侵食のメカニズム一覧
- 硫酸塩侵食:SO₄²⁻ と Ca(OH)₂・アルミネートが反応 →エトリンガイトの生成膨張による破壊(対策:C₃A 量の少ないセメント、高炉セメント等の使用)。
- 下水の生化学的腐食:硫酸塩 →硫酸塩還元細菌により 硫化水素(H₂S)となる →気相部 硫黄酸化細菌により 硫酸(H₂SO₄)→ セメントペーストの分解・泥状化(対策:耐酸ライニング、抗菌コンクリート)。
- カルシウム溶脱:軟水接触による Ca(OH)₂ 等の溶出 →組織の多孔質化(対策:ポゾラン材・スラグ併用による緻密化)。
- エフロレッセンス:Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃(炭酸カルシウムの白色結晶析出)。主に美観上の問題。