コンクリート主任技士の試験対策として、定期配信の本日は「設計・構造」および「耐久性設計」の分野から、午後択一の計算・理論問題で大きな得点源となり、記述式でも必須となる「許容応力度設計法における曲げ引張応力度と中立軸の算出」に関する問題をお届けします。
コンクリートの引っ張り抵抗を無視し、鉄筋の弾性係数比(n = Es/Ec)を用いて断面を等価なコンクリート断面に置換する基本ロジックは確実に押さえておきましょう。
【問題】コンクリート構造物の許容応力度設計法(弾性理論)に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- (1) 鉄筋コンクリート部材の曲げ応力度計算において、コンクリートの引張応力は一切無視し、引張力はすべて配置された鉄筋(鋼材)が負担するものとして計算する。
- (2) コンクリートと鉄筋のヤング率(弾性係数)の比を「ヤング率比(n =Es/Ec)」といい、普通コンクリートにおいては一般に n = 15 程度の値を用いて等価断面への換算計算を行う。
- (3) 単鉄筋矩形断面(幅 b、有効高さ d)における中立軸の位置(上端からの距離 x)は、荷重(曲げモーメント)の大きさに比例して深く(d に近づく方向へ)移動する。
- (4) 鉄筋応力度を計算する際、引張鉄筋位置におけるコンクリートの仮定応力度の n 倍(ヤング率比倍)の応力が鉄筋に生じているものとして算出する。
【正解】
(3)
【解説】
- (1) 正しい: 許容応力度設計(弾性理論)の基本仮定です。コンクリートの引張強度は小さく(圧縮強度の1/10程度)、ひび割れが発生することを前提とするため、「コンクリートの引張応力はゼロ(完全無視)」として計算を行います。
- (2) 正しい: ヤング率比(n)に関する正しい記述です。鉄筋のヤング率(Es ≈ 2.0×10⁵ N/mm²)とコンクリートのヤング率(Ec ≈ 1.5 ~ 3.0 ×10⁴ N/mm²)の比率を取り、鉄筋の断面積 As を「n ・ As」のコンクリート断面積に置き換えて計算します。実務・試験では一般に n = 15 を使用します。
- (3) 誤り(これが正解): 超重要かつ計算理論の盲点を突いた引っ掛け問題です。ひび割れ算定後の弾性理論において、中立軸の位置(x)を求める1次モーメントの釣り合い式は、 b ・ x ・t x/2 = n ・ As ・ (d – x) となり、「幅 b」「有効高さ d」「鉄筋量 As」「ヤング率比 n」という断面諸元のみで決定されます。式の中に曲げモーメント(荷重)の項は含まれないため、中立軸の位置 x は荷重の大きさによって変化しません(一定である)。「荷重に比例して移動する」とした記述が明確な誤りです。
- (4) 正しい: 応力度換算の基本原則です。ひずみの連続性(ひずみ一致の仮定)より、同じ位置にある鉄筋とコンクリートのひずみは等しいため、鉄筋の応力度はコンクリート応力度の n 倍になります(σs = n ・ σc)。
要点チェック(許容応力度設計法のポイント):
- 基本仮定: コンクリートの引張強度は無視 / ひずみは断面内で直線分布。
- ヤング率比: n = Es / Ec ≈ 15 (鉄筋面積を n 倍のコンクリート面積に置換)。
- 中立軸位置(x): 断面の幾何学形状(b, d, As, n)のみで決まり、荷重の大きさには依存しない(一定)。
「中立軸の位置は荷重(モーメント)の大きさによらず固定」という知識は、計算問題を解かずに選択肢を絞り込む際の大変強力な武器になります。
本日も一日、ご安全に!合格に向けて着実に歩みを進めていきましょう。